5年先のラブストーリー-この世のしるし-
-移植前日-
直樹はちょうど夏休み中だった。
恵子の容体も安定し無理をさせない条件で一時退院の許可がおりた。
直樹と恵子は言わずとして二人の思い出の場所へ向かった。
「直子、お父さんとお母さんね、ここでお腹にいたあなたと三人で結婚式を挙げたのよ」
そう、ここは二人が決して忘れられない思い出の地、出発の場所だった。
それを母から聞いた直子は二人に最高の笑みを贈った。
はしゃぐ直子、そして追いかけっこ。
直樹は幸せだった。
永遠に続いて欲しいこの時をしっかり胸に焼きつけていた。
日影に腰掛ける恵子とて同じ気持ちだった。