5年先のラブストーリー-この世のしるし-
そして
「そうか。パリへ連れて行くって約束したもんなだから、だ・か・ら、約束を果たすまで寝たふりをしているんだ。そうだよな、約束は果たすものだよな。それならそうと言ってくれればいいのに・・・分かったよ、パリへ行こうな。そしたら起こすからな・・・」
外からはセミの鳴き声だけが聞こえた。
その時「クソォーッ!」
直樹は恵子の胸に顔をうずめ思いっ切り泣いた。
しばらく時が流れた。
そして直樹は呟くように言った。
「どうして、どうして今日なんだよ」
直樹は恵子の手をギュッと握り締めた。
そして、ゆっくり口づさんだ。
♪ハッピーバースディートゥユー・ハッピーバースディートゥユーハッピーバースディーディア・ケイコ・・・ハッピーバースディートゥユー♪
無邪気に直子は拍手を贈った。
「お母さんは星になったけど、直子とお父さんをいつも空から見守ってくれるから。だから、直子がいつもここにいるよと目印をつけておこうね」
直樹は靴紐を解いて恵子から外した結婚指輪をネックレスにしてかけた。
悲しみの余韻も冷めやらぬ中、そこへ恵子の両親が血相を変えて駆けつけた。