5年先のラブストーリー-この世のしるし-


「十数年前、あなたが耳を塞ぎたくなる事件が起きたんですよ」

「何が事件だ。工藤と出会ってしまった事が大事件なんだよ」


「いいですか、今から言う事は紛れもない事実です。冷静に聞いて下さい」


「冷静になるのは先生の方ですよ」


松田はそれまでより増して真剣な眼差しになった


「二人が出逢ったのは高校時代だと聞いています」


「ふん」


「二人が出逢った時には既に恵子さんは不治の病に……、そして余命一年の宣告も受けていましたそんな時でした。お二人に悲劇が襲いかかったのは」


思わず松田はその先の言葉を失った。


そしてさすがの健三ですら、まさかの疑問を抱いた。


「直子、直子はいったい誰の……」


「二人にとって、それが誰の子であれ関係のない事だったんです。それよりもっと大切な事は何かそれと立ち向かって来た工藤さんの強さを知って頂きたい」


「・・・・・」
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