怪盗ブログ
考えを巡らしながら歩いていると、少し先の明かりのついた部屋から話し声が聞こえてきた。
「おまえと十星と、どういう関係なんだ」
「なんの関係もねーよ」
会沢藤五郎と大貴の声だ。
二人ともどことなく苛立っているような声をしている。
「あのナイフは明らかにおまえに向かって投げられていただろう」
……え?
十星が投げたナイフは紫陽花めがけてのものじゃなかったの?
唐突に耳にした事実に驚き、息を潜めた。
「内藤の娘に突き立てたのも、おまえを挑発していたからではないのか?」
……は!?
突き立てたって、何を?
まさかナイフ!?
あ……
あの一瞬で変わった空気。
ピンと張りつめた緊張感。
あれはあたしの体にナイフが向けられていたからだったんだ。
その光景を想像しても、結局今こうして無事なせいか不思議と恐怖は感じなかった。
それよりも、2人の会話の内容が気になる。
普段なら既にあたしの気配に気付かれていてもおかしくはないのだけど、会話に集中しているのか二人とも気付いていないようだ。
「十星は千夏に気があるんだよ。だから俺が気に入らないんだろ」
「それならば今日さらって行ったのではないか?こちらとしては警察沙汰にしたくないからな。あの時の状況を考えても容易かったはずだ」
「んなこと知らねーよ」
険悪。
特に大貴はひどくイラついているらしい。
……この状況で見つかったら、なんかやばそう。
気まずいどころじゃないよ。
どうしよう。
もうどこかへ移動したほうがいいのかな。
でも二人が黙っている今、足音を立てたら見つかってしまいそうな気もする。
せめて会話が再開されれば……
そう考えていると、都合良く会沢藤五郎が話し始めた。
「……おまえ、まだ逃げ道でも探しているのか」