不良×依存症


「んー。何かいきなり退部して、暴走族にはいったって…」


お兄ちゃんがそう言った。


いきなり…。


お兄ちゃん、いきなりなんかじゃないんだよ。


なっちゃんは…。


なっちゃんは、ハメられたんだ。


唇を噛みしめ、スカートの裾を強く握り締めた。


やっぱり。

なっちゃんは、本物だったんだ。


野球の才能があるんだ。


彼は、まだ散っていない。

散りもしなければ、開花さえもしていない。



「アイツはもったいないよ」


お兄ちゃんの言葉が冷たく胸に突き刺さった。


もったいない。


……なっちゃん。


あたし。


なっちゃんが野球やってるとこ、見てみたいよ。


彼を想っているから、そう思うのかな。


ううん。


違う。


陸だって、お兄ちゃんだって、あたしだって、なっちゃんにもう一度野球をやってほしいんだ。


身近にこんなにいるのだから、もっと探せば、数え切れないくらいいるに違いない。



「お兄ちゃん。」


あたしは、お兄ちゃんに視線を向けた。
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