先生愛!~もう1つの片思い~
北見さんは、小さな声でためらいがちに話し始めた。
「私には、実は……結婚したいと思っている人がいるんです。
その人は、画家を目指していて、芸大を出てからずっと自分の絵の才能を磨いています。」
俺は黙って頷いた。
「でも、彼はまだ有名ではありません…。光を掴むため、下積みをしている時期です。それに…必ずその下積み時代が報われて有名になれるとも限りません。非常に厳しい職業です。」
そして一呼吸おいて、彼女は再び口を開いた。
「だから…だからやはりそれなりに生活も切り詰めていかなければいかないといけないです。それを父が許してくれるかどうか……。」
終盤にさしかかると、さらに声が小さく消え入るような声色で彼女は言った。
「そうですか…。それで、そのことはお父様は知っていらっしゃるのですか?」
俺はできる限り優しい声色で尋ねた。
彼女は言葉を発さず、ただ首を横に振った。
「何故です?」
俺は更に一歩踏み込んで尋ねた。
「それは…やはり父がそんなこと…許すはずないと思って…。」
彼女は下を向いて細々と答えた。