紅い記憶
…和樹が5歳で桜は3歳のクリスマスの日、家が火事になったらしい。


 
 丁度母親は出かけていて家には、和樹と桜、それから父親しかいなかった。


 
 そしてその夜、突然家の中が燃えた。



父親は、もともと足が悪く、子供2人を担いで走れる状態ではなかった。

大声で和樹に桜を連れて遠くへ逃げるように言い、後から自分も逃げるからと、泣き喚く和樹を説得したらしい。



 和樹は泣く泣く言うとおりに桜の手を引っ張って、家から連れ出したのだった。



 その後、親戚が二人とも引き取ってくれたが、少し経つと経済的な面もあってか、または無口な桜の世話に手こずったのか、あるいは両方か、桜だけを孤児院に入れてしまったのである。




父親はその後、母親の大事にしていたピアノのそばで見つかったそうだ。





 父親を無くし、どうすることもできなかった和樹は、そのままその家で14年間暮らしてきたのだった。



 14年間何度も桜のところに行こうと思った和樹だが、桜と会っているところを親戚に見られでもしたら…。



 そんなもいがあり、結局今まで一度も行けなかったのだ。



 でも和樹は去年専門学校を卒業し、立派に独り暮らしをしてきちんと働いている今なら、桜を引き取ることができると思い、孤児院に行ってきたそうだ。



だが、桜は4年前からどこかへ行ってしまって、居場所がわからない、と言われ、その後ずっと探していたということだった。
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