みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
なんと彼女は目の前の風景を写生せず、ウチが描いた絵をソックリそのままコピーして描いてはったんや。
もちろんウチは抗議した。
けど一葉はこう答えた…、
「美佳と違ってボクはコンクールの入選なんて最初っから狙っちょらん。とりあえずは時間内に絵を描いて提出しちょけば、先生には怒られんで済むけん、上手い美佳の絵をそっくりコピーさせてもらったんや」
…って――――――
× × ×
結局、アノ最優秀賞をもろた絵は、神社を写生したもんやのうて、ウチの描いた絵をそっくりそのまま一葉が真似して描いたニセモノ……つまりウチが描いた絵の贋作(がんさく)やった、ってことや。
ウチも、まさか一葉がコピーしただけの絵が賞をもらうなんて夢にも思わんさかい、そのときはさして強い抗議はせぇへんやった。
確かにそっくりコピーをされた一葉の絵を見て、一抹の不安はウチにもあった。
せやけど美術の辺見先生が見れば、一葉がウチの絵をコビーしたモンやてスグに分かる思うて、その場はそのままにしといたんや。