契約の恋愛
私は怪訝に表情を歪め、ケータイを手に取る。

「陸飛の事は席も隣だし、休んだ時とか一応メールとかするんだけど…ここんとこ返ってこないんだよね…。」

陸飛はなんて言うか…女子みたいな性格だ。

メールとかすっごいマメだし、長いし、返信が早い。
返信率はほぼ100%で、それを考えると一切連絡が取れない陸飛が心配になってくる。

陸飛も一応友達だし。

「電話は?」

雪葉の表情が、どんどん青ざめていく。

自分自身でも気付いていないのだろうか。

今の雪葉の表情は、何かを知っているような表情になっている事を。

でも私はあえて、知ってるの?なんて聞かなかった。
雪葉が何か探りを入れているなら、口にするのもおっくうだという事だ。

なら、雪葉から何か言ってくるまで璃雨は待った方がいい。

そう感じた。

「…璃雨から電話してもあいつ出ないの。いつもだったら、犬みたいにソッコー出るのに。」

「…そっか。」

雪葉の顔がうつむいていく。
そんなに心配なら、何で何も言わないんだと口にしそうになったけど止めた。

暗くなってしまった空気を和らげようと、私は心にもない事を口にした。

「じゃあ…璃雨今日の帰り亮也の家に寄ってみるよ。」

その言葉にハッと顔を上げる雪葉。

何かを言いたげな顔。

「ね?」

作った笑顔で微笑む。
< 106 / 236 >

この作品をシェア

pagetop