契約の恋愛
「行ってらっしゃい。」

…雪葉が走り去った後、私はすぐに亮也の家には向かわず、窓際の席に腰を下ろし運動場を眺めていた。

運動場には野球部やソフトボール、サッカー部が真面目に練習をしている。

…サッカー部。

自然と無邪気にボールを蹴るサッカー部の方に視線が向いていく。

オレンジ色の太陽が、今日の役目を終えながら山に隠れようとしている。

私のどんな表情を太陽は照らしているのだろう。

ボールを蹴る音が耳にずっと残っている。

静かに瞳を閉じた。

"あの人"もサッカーをしていた。

というか、サッカー部の顧問だった。

どこかの中学のサッカー部が潰れかけていた所を、なんとか部員を集め、なんとか復活させたと自慢気に話をしていたのを覚えている。
実際、サッカー部の顧問をしている"あの人"を見た事がある。

サッカー初心者のくせに、夢中でサッカーボールを追っている姿が目に焼き付いていて。

確か他校の不良男を勝手に部活に参加させて、校長に叱られたと肩を落として嘆いていた時もあった。

彼は優しかった。
単純でお人好しで、バカでそれなのに誰よりも強くて。
不良男とも友達のように接し、誰にでも優しい。
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