契約の恋愛
ゆっくりとケータイに手を伸ばそうとする陸飛を、冷めた顔で見つめる亮也。

陸飛は無表情のまま、ケータイを開く。

"璃雨"

確かにそう表示されていた。

「…璃雨…。」

力なくつぶやく。

亮也の孤独を誰よりも理解してあげられる人。

璃雨という言葉に、亮也の目が見開いた。

"うっわー…。派手にやったね、これ。"

"誰だ、お前。"

"私?私は璃雨。あんたと同じクラスなんだけど。"

"…あっそ。"

"あっそじゃなくてぇ…ここちゃんと片付けてよね。璃雨、ここの掃除当番なんだから。"

不意に中学の時の記憶が頭の中で響き、亮也はあわてて首を振った。

陸飛はそんな亮也に目もくれず、ケータイを切る。

再び静寂を取り戻した、湿った工場。

しばらくの沈黙が続き、亮也は掴んでいた男をドサッと放り投げた。

パンパンと手をはらう亮也を静かに見つめる陸飛。

二人は、あまりの暗さに道に迷っていた。

そう言った方が、正解に近いかもしれない。

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