契約の恋愛
もし、暗闇の中で声を失えば今の俺達は間違いなくはぐれてしまうだろう。

もし、暗闇の中で腕を失えば今の俺達は間違いなく過ちに惑う友を引き止める事はできないだろう。

もし、暗闇の中で足を失えば今の俺達は間違いなく過ちに走る友を追いかける事はできないだろう。

お互いを守りあってきた俺達は、いざ柱を失えば一歩も動けなくなってしまう。
そして、道に迷う友は、他人を傷つける事で自分を保つ。

それではいけないと、分かっている。

けれど、亮也からケンカを奪えば何も無くなってしまいそうで。

抜け殻になってしまいそうで。

恐ろしく、何もできなかった。

こんな時、"あの人"はどんな言葉を亮也にかけた事だろう。

体を張ってまで、亮也の孤独を受け止めた"あの人"なら。

陸飛は深くうつむく。

今でも鮮明に覚えている。

"お前があの不良男の親友かー。女みたいな顔してんな。"

声が、響く。

今でも、バカみたいに覚えている。

「陸飛。」

不意に亮也に名を呼ばれる。
それが、ほんの少し優しさを帯びていたので、俺はゆっくりと顔を上げた。

血で染まった頬や、あざだらけの腕。

痛みで生きていると感じられる、孤独。

それが、ひしひしと伝わってくる。

亮也はただ一言、告げた。
「行くぞ。」
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