契約の恋愛
私は大きな門に貼りつけられたインターフォンをためらいなく押した。

……。

……。

……。

…出てこない。

璃雨はゆっくりと腕を下ろす。
物音一つしない一軒家は、妙に不気味だった。

まぁ、いないのも無理はない。
亮也はこの家を嫌っているし、何よりこの家には人一人もいない。

どうして?

それは、亮也の両親、いや、亮也を養子として迎えたここの金持ち夫婦は、何年か前に死んでしまったからだ。

亮也を置いて。

しかも……自殺だった。

亮也はその場面を直接目の当たりにしてから、少し気がおかしくなった。

両親に捨てられ、施設で過ごしてきて、やっと巡り会えた家族にも先にいかれてしまって……。

…亮也……。

私は、心の中で呟く。
発作的に衝動を起こし、暴れ狂う姿を陸飛は見ていられなかったと言っていた。
悲しさも苦しさも痛みも、どこにぶつけてよいのかも分からなくなってただ、自分を傷めつけて。

亮也が不良になったのも、不良になったんじゃない。
ただ、大人も他人も信じられなくなって、笑うことも忘れて、自分を保つ為の最善の策を打っていただけ。
< 125 / 236 >

この作品をシェア

pagetop