契約の恋愛
自分を慕ってくれる陸飛の為にも、自分自身を保つことで亮也は精一杯だったんだ。

……仕方ない。

陸飛の家に行くか。

そう思い、振り向いた矢先だった。

街方面へ向かう方角に進む、陸飛と亮也の姿を見たのは。

二人は璃雨の姿にきづかずに、進んでいく。

そんな二人の姿に言葉もでなかった。

陸飛の顔は傷だらけで、瞳にも色はない。

亮也の顔も同様で、腕も傷だらけだった。

明らかに暴れた後。

しかも陸飛まで。

私はそんな二人に声を掛ける気にもなれずに、ただ立ちつくしていた。

あなたの生きる糧は何?

心の中で、呟く。

それは、死ぬこと。

そう思っているのに、否定しそうになっていた自分がいた。

陸飛に亮也は救えない。

そんなこと、とっくの前に気付いていた。

そして、もうひとつ。

璃雨は気付いてしまった。
高二の夏。

何かが、変わろうとしていた事を。
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