契約の恋愛
とにかく不気味で、取っつきにくかった。

けれど、あのキス以来紀琉は少しずつだけどそんな雰囲気が薄れていってるような気がする。

受話器越しで顔も見えないけれど…何となく分かる。
よく笑うし。

《学校はどう?》

…あ。敬語のいた。

そんな事を密かに考えながら、口を開く。

やるじゃん。そう言うのをこらえながら。

「特に…変わったことはないけど。あ、テストで学年一位取った。」

《それ、前も言ってましたよ。》

「うれしかったんだもん。」
フフンと鼻を鳴らして、テーブルの上にずっと置いておいた水に手を伸ばす。

紀琉はクスクスと笑っているので、笑わないでと釘をさしてみた。

水を口に含み、一気にのどに流し込む。

《大丈夫ですか?》

紀琉の声が真剣味を含んだ、低いトーンになる。

「何が?」

私は、コップをテーブルに戻しながら訪ねた。

《疲れた声してる。》
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