契約の恋愛
暗い声が耳元で響くと、何だか頭まで支配されそうな感覚に陥る。

明らかに何かが紀琉の中で変わった。

「…どうしたの。」

聞くつもりはなかったけど、気付いたらそう口にしていた。

ガラスの破片と共に、紀琉の心を拾い集めるかのように。

《何でもありませんよ。それより、今週の土曜…でしたっけ》

やれやれといったような口調と、完全に敬語に戻った言葉。

何だかいきなりひどい距離まで突き飛ばされた気分だ。

「…う…ん。そうだけど。」
《…その日は…空いてると思います。》
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