契約の恋愛
少しの沈黙の後、紀琉はそう答えた。

璃雨は、じゃあ詳しい事は後で電話すると伝える。

そして、しばらくの沈黙がまた続いた。

お互い電話を切る事が出来ない位、愛しあってはいないのに何故か、手元はボタンを押すこともケータイを耳から離す事もできなかった。

気まずいというより、罪悪感。

何で罪悪感を感じなければいけないのかはイマイチ分からないけれど。

不意に、受話器越しから甲高い声が響いた。

《紀琉ー?まぁだー?あたしずっと待ってんだけど》
その声に、璃雨は背筋がピンとはるのを感じた。

冷や汗がだらだらと流れていく。

受話器越しに聞こえたのは、大人の女性のやらしい声。
完全に、男である紀琉を誘っている声。

鼓動がバクバクと高鳴っていく。

《美菜さん…っ!!こっちには来ないで下さいと…》

《いいじゃない。あたしずっと待ってて待ちくたびれちゃった。早くしよ?》

ドクン

また大きく鼓動が高鳴る。
璃雨の手元は次第に震えていた。

そんなのお構い無しに受話器越しの女性は、しつこく紀琉を誘っている。
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