契約の恋愛
「……っ。」

ケータイを無造作にテーブルに置いて、耳をふさいだ。

いつまでも響くやらしい女の声。

バカみたい。

バカみたい。

浮気オッケーの契約だなんて知らなかった。

それ以前に、大人の女性を家に上がらせていた紀琉の行為に吐き気がする。

あの部屋で見た大人の口紅は、その事をさしていたんだ。

どうしてもっと早く気づかなかったの。

バカみたい…だよ。

どうして、こんなにも胸が痛むの。

どうして、こんなにも涙が出そうなの。

どうして、こんなにも紀琉に会いに行きたいという衝動にかられるの。

どうして…。
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