契約の恋愛
雪葉の言う通りだよ。

璃雨の心は、"ここ"にはもうなかったんだ。

いつも、暗闇の中でどこか遠くを見つめながら。

肝心なことも、大切なことも、有り余るほど今まで璃雨の周りを舞っていたのかもしれない。

でも、無関心の心は喜びというものは全て拒んできた。

だからかな。

心から笑えなくなったのは。

自分でも、分からなくなる。

一体自分は、どこにいるのか。


「…璃雨が、一体何を抱えているのかは分からないけど…もう一度へこたれそうになってるなら、何とか持ちこたえて。自分を取り戻してほしい。」

「……うん…。」

璃雨は、右側のフェンスの向こうを見つめながら曖昧に返事をした。

その時の雪葉の表情は見えなかったけれど、もし見えていたら私達を待つ未来を、少しでも変えることはできたのかな…。

見ないフリなんてせずに、きちんとあなたと向き合っていればあんなことには…。

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