契約の恋愛
出来るなら永遠に消し去りたい過去、記憶…。

けれどこの傷が在るかぎり一生忘れることはないであろう、心の痛み。

本当の痛みを一生で一度知る事があるなら、それはあの時知ったに違いない。

俺にとっても、琉衣にとっても。

決して、生半可なことではなかった。

けれど、今も何とかこうして生きていられるのは、多分…。

残されたものがあるから。
「おっ。琉ー衣!」

不意に恵流の声がグラウンドに響いた。

そのおかげで我にかえる。
「なぁにー?」

琉衣は、かなりの大物を引いているのか声が苦し気だった。

「あっちにたくさん草あるから先にあっち引いてきて。それは俺がやるから。」

「ん~?あっ、ホントだ。じゃ、行ってくる!!」

「お~いってらっしゃい!」
そんな二人のやりとりに相変わらず背中を向けたまま、俺は草を引き続けていた。

すると、徐々に近づいてくる足音。

気付いた時には遅かった。
俺より背の高い恵流が、俺の背中に乗っかってきた。
「……っ!!!」

……重っ!!!

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