契約の恋愛
心の中で突っ込んで、耳を澄ます。

黒澤さんは、淡々と"契約"について説明をしていった。

「契約というのは、さっきもいった通り、お互いの為に生きる恋人同士になる事を指します。つまり、私と璃雨さんが恋人同士になるという事ですね。」

…何回聞いても、動機が見えない。

この人は一体何が目的なんだろう。
女に困るほど、の容姿でもないし。

…う~ん…。

「期間はあなたが死ぬまで、でどうですか?」

「…いいけど…私、いつ死ぬか決めてないよ。気まぐれだし。」

…口調からして、この人は私が死んでもどうでもいいらしい。

人間にとって"死ぬ"ということは一大事なのに。

黒澤さんは微かにうなづいて、微笑んだ。

私は、今がチャンスと思い、ずっと疑問に思っていた事を口にした。

「…黒澤さん。」

「はい。」

「恋人同士という事は、それに見合う行動もするんですか?例えば…、手をつなぐとか、キスをするとか。」
見知らぬ男とそういう事をするのはちょっと気が引けたが、私はそれ以上も何度か経験しているので、何とか割り切ろう。

そんな軽い気持ちだった。
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