契約の恋愛
そして、それが彼女を失う小さな原因になってしまう事に私は気付かない。

小さな世界で闇ばかり見つめていた私は、自分以外の人間の傷に気付けなかったの。

だから、雪葉を救えなかった。

私が、また自分しか見ていなかったから。


「ダブルデートいつにしよっかぁ?」

ルンルンで廊下をスキップする雪葉は相当機嫌がいいらしい。

笑顔がまぶしい。

只今放課後。

アイスをおごると約束(ほぼ強引)した亮也を待っている所だった。

一旦トイレに行き、戻ってきたのだが隣のクラスはまだ終わっていない。

あの担任、話長いんだよなぁ…。

よく短気な亮也が耐えているものだ。

私は一旦自分の席に着いて、ふぅと一息つく。

今日は雪葉に彼氏ができたと報告できたし、ちょっと恋人らしくなってきたかも。

契約上だけど。

しばらくして、私は手元にケータイが無いことに気付いた。

当然のことながら急いで探し出す。

雪葉は相変わらず、幸せそうな表情でほうづえをついている。

そんなにダブルデートがしたいか。

…あれ。ないなぁ。
バックの中かなぁ。

だんだん心配になってきた私は切羽つまって探しだす。

ケータイには"あの人"との大切な思い出がつまっている。無くすわけにはいかない。

「どしたの?」

能天気な雪葉の口調に多少ムカっとするが、彼女に非はない。

冷静に。

「ケータイが古い方がないのー…。」

そういって奥の方まで手を突っ込む。

と。

おっ。この手触りは。

「…あったぁ。」

チョコンとケータイを手のひらに乗せる。

良かった。本当に良かったぁ。無くしたらどうしようかと思った。
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