契約の恋愛
何も無くなったあいつを、心事守りぬくと。

俺は"あの人"に誓った。

どんな時もそばにいる、と。
それが"あの人"の願いで一生分の夢だったんだ。

璃雨、お前は知らないだろうけど。

「約束で、自分のしたい事も棒にふるわけ?」

何も知らない陸飛だが、どこか確信をついた口調だった。

「…いいんだよ。俺は。」

そう、俺はいいんだ。
俺は別に死にたいなんて思う程、現実に汚されてはいない。
そこまで、何かを失った事もない。
ただ…影のように生きてきた分、璃雨の弱さが分かる。
俺は、"あの人"と璃雨に救われた。
救われたから、何もかもを手放すことになっても我慢できる。

耳をふさげば、嫌いな音も聞こえてこないし…。

瞳を閉じれば、見たくないものも見ずにすむ。

そんな単純な事で、つらいことは乗り切ってきた。

「俺は亮也が心配だよ。亮也は、クールだけどどこかが異常に真っ直ぐだ。
亮也が壊れてしまうんじゃないかって、思う。」

陸飛がフェンスにもたれてうつむいた。

涼しい風が、陸飛の地毛の茶色い髪をゆらす。
< 78 / 236 >

この作品をシェア

pagetop