契約の恋愛
陸飛は昔からどこか鋭い。
普段はバカで単純なのに。
亮也は黙ったまま、フェンスに近付き手をかけた。

あんなに好きだったボールの音も、今では一番嫌いな音となった。

そうやって現実は、人の大切なものを容赦なしに奪っていく。

「…約束なんだよ。」

フェンス越しの"あの人"に語りかけるように亮也は歯がゆく唇を噛み締めた。

「約束…?」

「あぁ…。」

あの日、あの時、俺は約束した。

何を奪われても何を失っても、あいつだけは守ると。
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