契約の恋愛
少しぶっきらぼうに答える。
視線なんか絶対合わせない。目が腐る。

「へぇ…。そうなんだ。手伝ってあげよっか?俺が。」
…はぁっ!?
なんでそんな話になんの?
気持ち悪いし。

「別にいいよ。悪いし。」

そっぽを向いて、食堂の扉を見つめる。
こんな時、紀琉がヒーローみたいに璃雨を連れ去ってくれたらな。

「はは。別にいいし。俺暇だし手伝うよ。」

ほら。

そう言って、優瑠は私の腕を強引に掴む。

その力加減がハンパじゃない。
私は直感で理解した。

この男、璃雨になんかするつもりだ。

優瑠はいつもそうだった。
璃雨に見せかけの嘘をついて、璃雨を支配しようとする。
優瑠はなんにも変わっていなかった。

「…っ!離してっ。」

「何嫌がってんの?人探し手伝うって言ってるだけじゃん。失礼だなぁ、璃雨は。」

のんびりとした口調には、最早感情はこもっていない。
私の頭に鳴り響く危険信号は、より一層音を高くした。
…ヤバイ。
このままじゃ、本当にヤバイ。
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