契約の恋愛
完璧に。

私は人目も気にせず、声を荒げた。

「いいっていってんじゃん!!何で分かってくんないの!!?彼氏探してんの!あんたと一緒にいたら怪しまれんでしょ!とにかくいいから。離してよ!」

そう言って、腕に力を入れる。
だが、優瑠の手は璃雨を離してはくれなかった。

それと同時に、優瑠の表情から笑顔が消えた。

…もうやだ。
私は激しく肩を落とした。
このままじゃ、璃雨は優瑠につれていかれる。

今から璃雨が激しく抵抗しても男の力にはかなわない。
食堂の人達も見て見ぬフリだし。

…紀琉。
早く来て。
早く。

いつのまにか私の心は激しく紀琉を求めていた。

"あの人"を求めるわけでもなく、亮也を求めるわけでもなく、ただ一人。

偽りの恋人の、ただひとりの人間を。
< 84 / 236 >

この作品をシェア

pagetop