契約の恋愛
私に過去があるように、紀琉にも過去がある。

…ねぇ。紀琉。

何だか、変な感じ。
昨日初めて会ったあなたが、今はこんなにも近いの。
なんの努力もしていない璃雨が、こんなにも近くであなたを感じてる。

あなたを本気で愛していた人は、きっと怒るだろうね。

……。

ゆっくり紀琉の頬に触れていると、突然紀琉の大きな瞳が開いた。

一種のホラー映画のように、激しく璃雨の肩が上下する。

それくらい突然だった。

紀琉は何も言わず、私の肩から頭を上げた。

「ど…どうしたの?」

鼓動があがり、どくどくといっている。

紀琉は私に向き直って、また璃雨の肩に今度はおでこを乗せた。

紀琉の香りが、近くなる。
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