契約の恋愛
え、と紀琉を見ると紀琉は穏やかに瞳を閉じている。
え。寝んの?

「…ねぇ。」

「でも、良かった…。」

「え…?」

紀琉は瞳を閉じたまま、言葉を続ける。

「璃雨を助けることができて、本当に良かった…。それに、璃雨は私を呼んでくれた。」

呼……?
璃雨は首を傾げる。

…あの時か。

「やめてよ。なんか恥ずかしいよ。」

実際ちょっと顔が熱くなってるし。

紀琉は瞳を閉じたまま、クスクスと笑った。

…それにしても。

ふと思う。

紀琉の顔って本当にきれいだなぁ。

肌はニキビも染みも一つもないし、白い。

鼻は高くて、まつ毛も長い。
漆黒の髪の毛は、真っ直ぐで艶があるし。

…うらやましいな、ちくしょう。

男っていうのがもったいない感じがする。

私は無意識の内に、紀琉の白い頬に触れていた。

つるっとしていて赤ちゃん肌みたい。

一体何人の女の人が、こうやって紀琉に触れてきたのだろう。

璃雨の知らない誰かが、紀琉に触れ紀琉を愛していた。
< 92 / 236 >

この作品をシェア

pagetop