ずっと抱いてて
第3章
     3
「祐太」
 

 愛海がいきなり呼びかけてくる。


 ボクは大いに戸惑った。


「いきなり何なの?」


「しばらく抱いてて」


「うん。分かった」
 

 ボクは頷き、彼女の体を引き寄せ、思いっきり抱きしめる。


 愛海はしばらくの間、ボクの腕の中に包(くる)まりながら、ゆっくりと呼吸していた。


 スースーという静かな息が漏れ出ていて、ボク自身、彼女を抱きながらしばらくベッド上で佇(たたず)む。


 ボクは思う存分愛海を抱き、何度も唇を重ね合わせて、キスを繰り返した。


 キスするごとに、彼女の口からはわずかにコーヒーの匂いと紅茶の香りが混じって漂ってきている。

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