ずっと抱いてて
「ああ。ありがとう」


 ボクが礼を言うと、愛海がキッチンへ入っていく。


 素足の彼女は、脇下に軽くデオドラントを振っていて、優しい香りが辺りに漂う。


 ボクはその匂いを嗅ぎ取りながら、まだ成熟には早すぎる愛海に一人の女を感じた。
 

 ゆっくりと時間が流れていき、ボクも愛海も互いにいい感じで付き合い続けていられるのが分かる。


「冷たいわよ」


「ああ。今日はこの陽気だからな。冷たい方がいいよ」


 愛海が砕いた氷を入れたアイスコーヒーを淹れて持ってきた。


 ボクが遠慮なしにグラスに口を付ける。


 砂糖なしのブラックで飲むと、冷えた液体が喉奥へと入っていく。


 愛海もゆっくりとコーヒーを呷り始めた。


 グラスに浮かんでいた氷が徐々に溶けていく。

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