ずっと抱いてて
第8章
     8
「お前、彼女とかいるのか?」


「ええ、一応」


「学校の同級生?」


「まあ、そうですね……」


 ボクは咄嗟(とっさ)に倉田さんから心中を悟れられたと思ったので、曖昧に頷いてみせる。


「今、楽しいだろ?」


「そうですね。結構充実してますし」


「俺もお前ぐらいのときに学生運動なんかしなきゃよかったんだけどな」


「そんなに凄かったんですか?」


「ああ。大学の構内にバリケード作って、警官と遣り合ったよ。石とか火炎瓶投げたりしてな」


「想像がつかないです」


 ボクは目の前にいる、いかにも優しそうなおじさんである倉田さんが過去にそんなこと
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