ずっと抱いてて
をしていたなど、聞かされるまでは知りもしなかったし、実際倉田さんはそれだけ物凄い時代を経て、今まで来ているのだ。


 ボクはその夜、明け方まで倉田さんの話を聞き続けた。


 延々と話が続く。


 聞き入るときもあれば、適当に相槌を打つだけのときもある。


 倉田さんは昔の人間なので、話が長かった。


 ただ、実際体験談なので、十分説得力がある。


 それにボクは会社指定の警備員用の制服を着て、合間に淹れていたコーヒーを啜りながら、深夜に二度の点検をするだけなので、別に倉田さんの話は暇つぶしと思えばそれでよかった。


 明け方、地平線上に太陽が昇り始める頃、倉田さんが、


「大嶋、もう帰っていいぞ」


 と言ってきた。


「はい。じゃあ、お先に失礼します」

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