ずっと抱いてて
第17章
     17
 六月の中旬で梅雨真っ最中である。


 ボクは比較的淡々と部屋で原稿を打ちながら、時折鳴らないケータイの方を見つめる。


 愛海も忙しいのだろう――、そんな風に思いながら……。


 不意に設定していた着メロが鳴り始めた。


 メールではなく、電話の方だ。


 ボク自身、電話とメールは着信音を変え、使い分けている。


 その日は電話だった。


“誰からだろう……?”


 愛海からかなという甘い予感があった。


 だが、フリップを開いてみると、全然知らない番号がナンバーディスプレイ上に映っている。


 しかも固定だ。


 ボクは通話ボタンを押して出てみた。
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