ハッピーバースディ
(二)
あの日、
突然の事故でタクが逝ってしまったと知ったとき、
私は何も迷わなかった。

ぬけがらになったタクは、もうタクじゃない。

去っていこうとするタクの魂を追いかけないと、
早くつかまえないと。

今なら間に合う。

待ってて。

走って、走って、階段を駆け上がった。

待ってて。待ってて。

もうすぐ追いつくから。

息が苦しくて、肺が痛くて、
足がつりそうで、頭がくらくらして、でも走った。

待ってて、ほら。
そこへ辿りついたとき、目の前にタクがいた。
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