Secret Prince
「……よし、決まりだな。
 ところで、お前、今は自由時間だ、とか言っていたが、
 ……時間は、大丈夫なのか?
 この家の構造は調べ尽くしてあるから、
 万一追われたとしても、逃げ切れる自信は有るが、
 追っ手など、無いに越した事は無いからな。」


男は、ニヤリと笑うと、自信あり気に言い放った。
不思議と、説得力があって、俺は素直に、信じたいと思った。
否、この人なら信じられる気がした。
だが、ふと、時計を見てみる。










「え、っと……。
 ……っぁ、どうしよう、……後3分くらいしたら、また見に来る。
 …………っ、ぅ、……俺、……怖いよ……。」




お世辞にも、脱走に向いた時間とは思えなかった。
冷や汗が、頬を伝い、背筋へと伸びていくように思えた。
返事に、何秒かかったかは分からない。























俺は、5時間、あの子の相手をして、3時間の自由を与えられている。
それを3度繰り返して、やっと長い一日が終わるんだ。
今は、一日が始まってから、15時間と57分。
正直、時間が有り余っているわけじゃない。




































男は、涙目になった俺を見つめると、一つ溜め息をついて、
俺の背中に腕を回してきた。
あの子と違って、この男の身体は、何だか温かい。
冷たくも、熱くも無く、丁度良い温度だった。
抱きしめてくれている事で、彼の鼓動も、温もりも、
とても、とても、優しく感じられた。
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