盲目の天使
「ところで、リリティス、身の回りのことは一人でできるのか?」
話題が変わって、リリティスは、ほっとした。
「いいえ、目が見えなくなってからは、この部屋と中庭以外を出歩いたことはございません。
食事は最初に位置を教えてもらえばなんとかなります」
「着替えは?」
「いつも、侍女に手伝ってもらっておりました」
やはり、足手まといの自分を、カルレインは厄介に思い始めたのだろうか。
なんとか、気に入ってもらわなければ、カナン国が灰になる。
リリティスは、自分の肩に国の命運がかかっていることを意識して、
知らず、体を硬くした。
しかし、カルレインが次に言った言葉は、どうにも意味不明な一言だった。
「では、とりあえず、今は、俺で我慢しろ」
「え?」
我慢?
なにか、我慢しなくてはならないようなことがあるのかしら。
カナン国を救うためには、もちろん耐えなくてはならないでしょうけど・・・。
リリティスは、両腕を胸の前で、しっかりと合わせ強く握り締めた。
それだけでは、不安な気持ちが消えるわけもなかったが。