盲目の天使
ドアのノックの音と共に、一人の青年が入ってきた。
カルレインよりも少し若い、二十歳くらいの小柄な男だ。
「カルレイン様!こちらにおいででしたか」
「マーズレンか。どうした?」
「はい、実は・・」
言いかけて、リリティスに気づくと、マーズレンは、言いよどんだ。
この城の人間は、すべて脱出したのではなかったのか?
「リリティス王女だ。丁重に扱え」
マーズレンの視線に気づいて、カルレインは、彼の方に体を向ける。
「はっ!」
王女が幽閉されているという噂は、本当だったのか。
まさか、置き去りにされるとはな。
カルレインの言葉に背筋を伸ばしたマーズレンは、窓にはまっている格子を見つめて、リリティスに同情した。