盲目の天使
階段を上る足音を聞いて、リリティスは、またも王がやってきたのだと身震いした。
しかし、今日は上ってくるのが、やけに遅い。
心なしか、足音も違う気がした。
「どなたです?」
牢の鍵を開けるのに手間取っている音を聞いて、
リリティスは、その人物が、王でも侍女でもないと思った。
「こんばんは。リリティス王女」
「・・おう・・ひ様、ですか?」
リリティスは、ソレイユの怒鳴り声しか聞いたことがなかったので、
すぐにそれが、彼女の声であると判断できなかった。
王妃が、こんなところにくるはずがない。
一体なぜ。
リリティスの頭は、混乱していた。
牢獄生活で、食欲もわかず、疲れが溜まり、
的確な判断力にも、欠けていた。
ソレイユのまとった香の香りが強すぎて、リリティスは、眩暈がした。