盲目の天使
窓が刻む軽快なリズムは、相変わらず、変わることがない。
「アルシオンを跡継ぎにしていただけるなら。
・・・私は、他に何も望みませんわ」
でも、といいながら、ソレイユは、視線を落とした。
計算ずくの、その仕草。
「同じ女に生まれながら、私だけが幸せでいるのかと思うと、
あの王女が、かわいそうに思えて。
カルレイン王子の命令で、仕方なく王に毒を盛ったのですから、
慈悲をお与えになってはいかがですか?
プロン王の側室になって、王の偉大さを知れば、
あの王女も心からあなた様に仕えるようになりますわ」
カルレインが、毒を盛るよう、指示した証拠があるわけでもないのに、
ソレイユは、断言した。
それは、もちろん、プロンに与える心理的効果を考えてのこと。
・・もう一押しね。
言葉は魔術だ。
口にすれば、それが真実となる。
プロンが、カルレインを嫌っているのは前からのことだ。
しかし、追い落としたがっているということに気づいたのは、
ここ数日間のことだ。
賭けなのかもしれなかった。
プロンの心を、読みきれていなければ、自分の負け。
だが、読みきれていたら・・・。
ソレイユの瞳の奥が、妖しく輝いた。