盲目の天使
なるほどな。
アルシオンを跡継ぎにするかわりに、王女を側室にすることには、異議を唱えないと、
そういうつもりか。
プロンは、自分の妻のしたたかさに、舌を巻いた。
案外、毒を盛ったのは、この妻なのかもしれない。
私が抱いた女どもに、子が出来ぬよう、薬を盛っていたのは、知っていたが・・。
今までにも、何度となく側室の話が出たことは、ある。
だが、それらは、なぜか、ことごとく破談になり、現在も、妻はソレイユただ一人だ。
毎回、後ろで糸を引いているのだろうとは思われるが、狡猾なソレイユは、
一度たりとも、尻尾を掴ませたことがない。
プロンの子供を身ごもってしまった、唯一の例外である、カルレインの母を除いて。
リリティスとソレイユ。
・・どう考えても、犯人である可能性が高いのは、後者だな。
早くから跡継ぎを決めておかなくて正解だった、とプロンは、心の中でつぶやいた。
アルシオンを跡継ぎにと決めていたら、自分は、本気で毒殺されていたかもしれない。
・・まぁ、こういう激しいところも、コレの魅力ではあるがな。
若くして王にたったプロンが、紆余曲折を経て、
現在のように、覇王とまで、呼ばれるようになったのは、
間違いなく、ソレイユの功績が大きい。
プロンは、若き日に思いをはせ、なまめく様な、美女であったソレイユを思い出した。
その美しさに隠れた、野心を灯すギラギラと輝く瞳を。
「いいだろう。アルシオンを跡継ぎにすることを、明日、公表する」
プロンは、ソレイユの肩を抱く腕に力をこめ、奪うように唇を重ねると、
そのまま床に押し倒した。
ソレイユは、これまでにないほど、妖しく微笑んだ。