盲目の天使
体が疲れていたが、それ以上に、心が悲鳴を上げていたカルレインは、
ベッドの上で、何度目かの寝返りをうった。
・・・だめだ、眠れん。
『あなたは、どなたですか』
リリティスの声が、何度も頭の中で、こだまする。
本当に、初めて会ったような顔をされた。
だが、おびえては、いなかったか・・・。
それだけが、せめてもの救いだった。
カルレインと出会った頃からの、記憶が全てないということは、
牢に入っていた間の、苦しい記憶もないということだ。
考えようによっては、それは都合のいいことにも思える。
カルレインは、そっと立ち上がると、リリティスの部屋に向かった。