盲目の天使

「どうした?何かあったのか?」


突然、背後から聞こえた低い声に、リリティスは驚いて振り返った。


「カルレイン様・・・」


「泣いているのか。

どこか、痛むのか?医師を呼ぶか?」


慌てたカルレインが、早足で、リリティスのそばまでやってくる。



なぜかしら。

この方の声を聞くと、とても安心する。



リリティスは、めちゃくちゃに砕け散ったように、苦しかった自分の胸が、

すっと、穏やかになっていくのを感じながら、潤んだ瞳で、カルレインを見上げた。


「リリティス」


リリティスに見つめられて、カルレインは思わず、

彼女を、力いっぱい抱きしめてしまった。


自分の事を思い出すまでは、不必要に触れない方がいいと、そう決めていたのに。


「お願いだ。泣くな。

お前に泣かれると、俺の胸が、刃物で刺し貫かれたような心地になる」





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