盲目の天使
カルレインは、目を閉じて、アルシオンの言葉を反芻した。
確かに、アルシオンの言うことには、一理ある。
リリティスの叔父が、自分の兄から王位を簒奪し、カナン国の王位についたのは、有名な話だ。
正統な王位継承者の娘であるリリティスが結婚すれば、
その相手が、カナンの国王となっても、少しもおかしくはなかった。
しかし・・・。
「ノルバス国が、二つに割れかねない」
やっとのことで、アルシオンを王にと決めたものの、
いまだカルレインを、王にと押す声が、ないわけではなかった。
カルレインは、内外的に、名を轟かせていたし、アルシオンは、その逆だ。
中には、なぜ優秀な兄を差し置いて、出来の悪い弟が王位を継いだのか、
プロン王が指名したのは、作り話なのではないか、などと揶揄する声も聞かれた。
カルレインが、カナン国の王になるとなれば、周囲からは兄弟が仲たがいの末、
兄が、カナンに出て行ったと思われるだろう。
カルレインを支持する民が、カナンに流れ込む可能性も、否定できない。