盲目の天使
カルレインの声は、冷静だ。
「それに、カナンを、ノルバスの一領地とするならともかく、
国として王を立てれば、追い出された前王のベリウスが、黙ってはいまい」
自分の王位を奪還しようと、周囲の国をまきこんで、戦になるのは間違いなかった。
軍事大国のノルバスと違い、カナンには、たいした軍事力などない。
緑豊かなカナンを破壊したくなくて、カルレインは、プロンの命令に従い、軍を指揮したのだ。
軍事力に大差のある、ノルバスとカナン。
自分なら、最低限の武力を行使し、最小限の破壊ですむ、そう思ったから・・・。
しかし、他国に攻め入られれば、力の拮抗した国同士、酷い争いになるのは目に見えている。
カルレインは、アルシオンの提案に魅力を感じたものの、頷くことはできなかった。