盲目の天使
リリティスは、柔らかく微笑むと、流れる髪に手をやり、もう片方の手をカルレインに差し出した。
答えは、最初からわかっていたのだ。
「では、私と、この国を。
妻にしてくださいませ」
リリティスの凛とした声音が、カルレインの鼓膜を揺らす。
カルレインは、跪いて、リリティスの華奢な腕を手に取ると、
その白い手の甲に、そっと唇を寄せた。
「お前とこの国を、必ず幸せにしてみせよう」
カルレインの言葉に、どちらからともなく抱き合うと、二人はやさしく見つめあう。
静寂が二人を包み、まるで世界に二人だけしか存在しないような錯覚にとらわれて、
リリティスの心臓が、トクンと跳ねた。
カルレインは、リリティスの愛らしい唇を、親指のはらでゆっくりとなぞる。
そのまま、その唇に誘われるように、自らの熱い唇を押し当てた。
さわやかな風が吹き抜けると、豊かな緑たちがざわざわと揺れて、二人を祝福した。