盲目の天使
はるかな高みに築かれた、堅固な城へ向けて、一羽の鷲が羽を広げる。
その鷲が持ち帰った、大事な書面を、鷹匠は、大急ぎで城の主へと届ける手配をする。
「王!アルシオン王!
カナン国のカルレイン王より、書状が届きましたぞ!」
鷹匠に渡された書状を、大事そうに抱きかかえ、
いつもは、岩のようにゆったりと構えている白髪の大臣が
珍しく興奮気味に口を開いた。
「何?兄上からだと?貸せ!!」
ノルバス国の主、アルシオン王は、その書状を重臣からひったくるように奪うと、
急いで中を開き、ぐるぐるとせわしなく瞳を動かす。
やがて、ほぉ~と深く息を吐くと、書状を目の前の大臣に差し出した。
「ロキ大臣!!リリティス王妃は、無事に女の子を出産したそうだ!!」
「おお!おめでとうございます、アルシオン王!!」
齢を重ねた証である、顔中のしわというしわをくしゃくしゃにして、
ロキ大臣は、喜びをあらわにした。