盲目の天使
一方、緑に囲まれた小さな城では、王妃リリティスの部屋の前で、
二人の人物が、今にも飛びかからんばかりの勢いで、壮絶な言い争いを繰り広げていた。
「まだいけません、カルレイン王!!」
「なぜだ?俺は夫だぞ!カナン国の王だぞ!
どうして、王妃の部屋に入れないんだ!!」
「片づけが済んでおりません!
御子様のお支度も、整え中でございます!」
カルレインよりも年若いその侍女は、王の前だというのに一歩も引かず、
両手を広げてカルレインを制止している。
周りの侍女たちは、はらはらして見守っていたが、
今にも、取っ組み合いになるかと思われたとき、部屋の扉が開かれた。
「カルレイン王。どうぞお入り下さい」
侍女の案内を受けて、カルレインは、風のように扉をくぐった。