盲目の天使
それから5日。
カナン国の領地にいる間、旅は順調だった。
ノルバスとの境には、ストレア山脈が聳え立つ。
この山脈が、ノルバスの交易が進まない大きな理由だった。
「リリティス。寒くはないか?」
「いいえ、大丈夫です」
カルレインの黒い馬に横乗りになって、リリティスは、背中に彼の温かさを感じていた。
「きゃあ~!怖い~!!!」
「目を閉じていろ。下を見るんじゃない」
ルシルの悲鳴に、マーズレンが声を荒げる。
ストレア山脈は、途中から馬車では通れないほどの険しい道になる。
片側が崖になった、細い道を抜けて行かなければ、ノルバス領には入れない。
馬車で進めるぎりぎりのところまで登りきると、
リリティスはカルレインの馬に、ルシルはマーズレンの馬に乗り換えた。
大きな鳥の翼が、鋭く風を切る音がする。
リリティスは、カルレインの飼っている鷲のジルが、すぐ傍にいるのだと思った。