Bitter
*
『レーイ、古典の訳みせてん!』
まだまだ夏を引きずる蒸し暑い二学期の教室で、亮太に話し掛けられた。
周りでは久しぶりに再会するクラスメート達がわいわいと騒いでいて、その声がトンネルの中にいるようにやけに大きく感じる。
『えー。』
『あいつら(男子)全滅なんだもん、ね、お願い!麗ちゃん!麗様!』
『もー、次から自分でやんなよ?はい。』
『わんっ!ありがと!』
ノートを渡したとき、指が触れた。
亮太の視線を感じた。
が、私からは合わせなかった。
同じようにあの三人がこちらを見ていたのに気付いていたし、
亮太の口から次に必ず私を心配する質問を投げ掛けられるのはわかっていたから。
ベランダにとまっていた小鳥が、ドアの開く音とともに飛び立った。
誰が入ってきたかはわかっていたから、私はずっと小鳥を目で追い掛けた。
まるで、彼の姿をそれほど見たかったわけではないと誰かに訴えるように、少ししてから前を向いた。
自分の気持ちと彼への、小さな抵抗。
一ヵ月半ぶりに見る高瀬は、髪がまた少しのびて、また少しやせたようだった。
いつもなら気に入っているこの一番後ろの席と、教壇との距離が急にもどかしくなる。
でもきっと、これ以上近づいたら、私は椅子をガターンと倒して彼の元へ走っていってしまうんだろう。
と、手足を固くして教科書に視線を落とした。
少し、文字がぼやけた気がした。
『レーイ、古典の訳みせてん!』
まだまだ夏を引きずる蒸し暑い二学期の教室で、亮太に話し掛けられた。
周りでは久しぶりに再会するクラスメート達がわいわいと騒いでいて、その声がトンネルの中にいるようにやけに大きく感じる。
『えー。』
『あいつら(男子)全滅なんだもん、ね、お願い!麗ちゃん!麗様!』
『もー、次から自分でやんなよ?はい。』
『わんっ!ありがと!』
ノートを渡したとき、指が触れた。
亮太の視線を感じた。
が、私からは合わせなかった。
同じようにあの三人がこちらを見ていたのに気付いていたし、
亮太の口から次に必ず私を心配する質問を投げ掛けられるのはわかっていたから。
ベランダにとまっていた小鳥が、ドアの開く音とともに飛び立った。
誰が入ってきたかはわかっていたから、私はずっと小鳥を目で追い掛けた。
まるで、彼の姿をそれほど見たかったわけではないと誰かに訴えるように、少ししてから前を向いた。
自分の気持ちと彼への、小さな抵抗。
一ヵ月半ぶりに見る高瀬は、髪がまた少しのびて、また少しやせたようだった。
いつもなら気に入っているこの一番後ろの席と、教壇との距離が急にもどかしくなる。
でもきっと、これ以上近づいたら、私は椅子をガターンと倒して彼の元へ走っていってしまうんだろう。
と、手足を固くして教科書に視線を落とした。
少し、文字がぼやけた気がした。