Bitter
すかさずユリが聞く。
『なんで?好きな人いるの?』
『ちげーよ。』
『いるんでしょ。』
『いねーって。』
『レイでしょ。』
(!)
驚いて振り返ると
『ちげーよ!』
と、耳や頬を真っ赤にして言う亮太が目に飛び込んできた。
『ただの幼なじみだっつってんだろ!』
セリフとは裏腹に、表情は、宝物を守る子供のそれと同じだった。
ユリが、同じものを感じ取って、泣きだした。
そしてこっちにむかってくる。
アコとマキが隣で立ち上がり、ドラマのワンシーンみたいに彼女を抱きしめた。
私は手を思い切り踏まれ、三人のこの上なく冷たい針みたいな視線をぶつけられ、その輪に加わることを許されなかった。
亮太はぽかんとこっちを見ていた。
遅れて私の存在にも気付くと、彼は泣きだしそうな顔をした。
口が、“ごめん”と
小さく動いた、
私には首を横に振る余裕もなかった。
亮太は何も悪くない。
守ろうとしてくれた。
それで十分だった。
少しずつ、日が傾き始める秋のはじめ。
明日から始まる教室の新しい風景と、
屋上にいる誰かを想った。